先端研の研究領域
研究事例
広島駅エリア デジタルツインプロジェクト
現実空間の情報を集約した地域情報プラットフォーム
はじめに
近年、都市におけるさまざまな課題を解決する技術のひとつとして、デジタルツインに注目が集まっています。
デジタルツインとは、現実(フィジカル)空間に存在 する情報を仮想(サイバー)空間へ送り、デジタル化された現実世界のコピーを再現する技術です(図 1)。
IoT デバイス等から取得される現実空間の情報を、仮想空間上で分析し、その結果を現実空間にフィードバックすることで新たな価値創造が期待されています。
本稿では、アジア航測と復建調査設計株式会社(以下、「復建調査設計」)が共同で開発を進める「広島駅エリアデジタルツインプロジェクト」について紹介します。

広島駅エリアデジタルツインプロジェクト
「広島駅エリアデジタルツインプロジェクト」は、アジア航測のセンシング技術と、復建調査設計が持つまちづくりのノウハウや防災、交通計画等に関するコンサルタント技術を融合させ、地域の課題解決につながる“まちづくり DX”の推進を目的としています。
2021 年 6 月頃からプロジェクトを開始し、2022 年1 月には第 1 弾の成果として、広島駅北側エリア(通称 “エキキタ”)を中心とした 3D 都市モデルと可視化プラットフォームを試作し、共同プレスリリースを行いました(図 2)。

第1弾成果の紹介動画を公開中

細部まで再現した3D都市モデル
本プロジェクトでは、空中写真・航空レーザ、車載型レーザ(MMS)、地上型レーザ(SLAM)など複数の計測技術で取得したデータを組み合わせることで、詳細な 3D都市モデルを実現しています(図 3)。
3D 都市モデルの作成に当たっては、国土交通省が推進する「Project PLATEAU」のデータ製品仕様を採用しました。
このデータ製品仕様は、国際標準である CityGML 形式を採用しており、3D 都市モデルの詳細度を LOD1 ~ 4のレベルで分類しています。本プロジェクトでは、建物は LOD1 ~ LOD3、道路は LOD3 相当で 3D 都市モデルを整備しました。国際標準の形式を適用することで、モデルデータの流通性に配慮して幅広い活用を可能としています。

デジタルツインを活用したサービス
本プロジェクトの可視化プラットフォームは、オープンソースソフトウェア「Cesium」で試行構築しました。
複数のコンテンツを重畳して可視化することで、さま ざまなサービスの展開を試行しています。例えば、建物の構造種別ごとに色分けした 3D 建物モデル(LOD1)に、災害リスク情報(浸水想定区域、土砂災害危険区域等)と避難所を重畳することで、災害発生時の避難者誘導支援への活用が期待できます(図 4)。
また、広島駅周辺地域の各種団体や事業者が利用しやすいコンテンツとして、例えば歩行者支援のための歩行空間ネットワークデータ、地域イベント開催支援のための地域統計情報、観光資源情報などを 3D 都市モデルと組み合わせる方法についても検討しています。
今後、人流データなどのリアルタイム情報との連携により、現実空間の再現性の高いデジタルツインの構築を目指していきます。

おわりに
本稿では、「広島駅エリアデジタルツインプロジェクト」の第 1 弾の成果を紹介しました。引き続き、復建調査設計との共同研究によりコンテンツおよびサービスの拡充を進めてまいります。
本プロジェクトの遂行に当たっては、復建調査設計株式会社の皆様に多大なご支援を賜りました。この場を借りて、深く御礼申し上げます