アジア航測株式会社 先端技術研究所 アジア航測株式会社 先端技術研究所

先端研の研究領域

技術コラム第三回

射影変換してますか?

皆さん、射影変換してますか?

射影変換、ご存じない方も多いですよね。では相似変換はどうでしょう?スマートフォンの地図を思い出してください。地図は状況に応じて拡大したり縮小したりできます(スケール変換)。GPSと連動して現在位置を中心に表示位置を動かすことができます(平行移動)。また普通の地図であれば北が上ですが、カーナビでは、現在走っている方向が上になるように地図の向きを変えて表示することができます(回転)。私は進行方向を上になるようにカーナビを設定しますが、「常に北が上でいい!」とおっしゃる方もいます。皆さんはいかがでしょう?

ある座標から別の座標に変換することを座標変換と呼びます。上記に示した拡大・縮小、平行移動、回転を組み合わせて行う座標変換は相似変換です。相似変換は図形の形を変えないのが特徴で、空間情報の分野ではヘルマート変換とも呼ばれます。相似変換は撮影した画像のスケールを変えたり、回転したりするのにもつかわれます。私たちの世界は座標変換に満ちています。

しかし世の中には相似にはならない座標変換もあります。正方形が平行四辺形になったり、台形になったり、一般的な四角形に変換されるものあります。例えばプロジェクタでスクリーンに絵を投影したとしましょう。プロジェクタの方向に対して斜めに立っている壁やスクリーンに像を映すと、像が台形に変形したり、もっとひずんだ四角形になったりします(下の左の図)。これはプロジェクタ内で生成される画像がスクリーンに投影されると、形が変形してしまうことから生じます。こんな時に使われるのが台形補正機能です。皆さんも使ったことがあるのではないでしょうか。これは映す画像自体を先に変形させることにより、投影する画像が正しい形になるようになるわけです(下の右の図)。

プロジェクタによる映像の投影と台形補正

上の模式図のように、ある一点を中心に平面上の図形を別の平面に写すような座標変換を射影変換といいます。これを応用したのがイラストや絵画で使用する一点透視図法や二点透視図法です。一点透視図法では、見ている視線方向と平行な線が一点に収束していきます。視線方向に平行な面の正方形や長方形は、台形に見えるわけです。皆さんは今まさに長方形の面を見ている(これを読んでいる方はスマホやパソコン画面を見ているはずです)ので、視線方向に対して面が傾いていればその面は台形や一般的な四角形に変形して映っているはずです。すなわち射影変換をしているはずです。射影変換、意外に身近な変換であることがお分かりいただけたでしょうか。

一点透視法のイメージ図

実際のところ透視法は、実際のカメラや人間の目が像を得るときの投影方法を模しています。これを中心投影と言います。射影変換や中心投影のすごいところは、無限に遠い点が変換される実際の点というのが存在することです(1点透視法の消失点がその例です)。“無限”を扱うことは難しいのですが、実は皆さんの眼はそれをやってのけているのです。

中心投影の模式図
距離が2倍離れると、像の長さは半分になるはず・・・

中心投影だと、距離が2倍離れると映る像の中での長さが半分になります。たとえば皆さんのスマホを、スマホの長辺だけ距離を離せば、上の写真のように奥の辺が半分になる台形に見えるはずです。
・・・・あれ、実際にやってみると私には長方形に見えます。みなさんはいかがでしょうか。写真に撮ってみると実際に半分になっているのに・・・

人間の眼には、透視図法的な見え方も自然ですが、透視図法的に従わない絵画でも不自然な感じはしません。絵画の世界で透視図法的な表現が遅れてしまったのは、実際には人間の眼がそのようには見ていないことの証拠なのかもしれません。

著者紹介

織田 和夫研究室(個人研究室)室長

織田 和夫(おだ かずお)

PROFILE

所属学会
日本写真測量学会、地理情報システム学会・日本リモートセンシング学会
プロフィール
京都大学理学部地球物理学科卒。1988年アジア航測(株)入社。1994~1996年カーネギーメロン大学客員研究員。2018~2022年日本デジタル道路地図協会。日本写真測量学会常務理事・編集委員長(2024年9月現在)。論文博士(工学・東京大学)、技術士(応用理学)、測量士、空間情報総括監理技術者。平成13年度測量技術奨励賞、平成16年度日本写真測量学会学会賞受賞。専門は写真測量・画像処理。趣味は野鳥観察・軽登山・リコーダー。
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