先端研の研究領域
研究事例
高精度道路地図データの自動生成に向けた取り組み
MMS取得点群と画像を使用した手法開発
はじめに
近年、自動運転への利用や道路空間の高度な管理を目的として高精度道路地図データへのニーズが高まっています。アジア航測では、車載型レーザ計測システム(MMS)によって取得した点群と画像を使用して効率良く高精度三次元道路地図データを生成するための技術開発を行いました。本稿はその成果を報告します。
対象とする道路地物
高精度道路地図データを構成する地物のうち、図1に示す地物をデータ取得対象とし、データの取得方法は地物の特徴を考慮して、地物ごとに決定しました。点群の解析では、点群を可視化した空間内にて、作業者が各地物上の任意の位置を指定すると、自動的に地物を追跡してデータ化する「アシスト図化方式」を採用しました。画像の解析においては、AIによって対象地物の位置を抽出し、種別を判定する方法を採用しました。

点群の解析による道路地物抽出
点群の解析例として、歩道と車道の境界である車道部と、区画線(車線)をアシスト図化により抽出する方法を説明します。
車道部のアシスト図化では、図2に示すように、①作業者が点群空間内において縁石のエッジ部を指定すると、②自動的に周辺の点群から車道部の線分を生成し、③さらに線分の方向に追跡することによって車道部の線分を抽出する手法を開発しました。本処理においては、縁石周辺の雑草や落ち葉の影響および、歩道の切り下げ部などの段差の小さい箇所への対策により、抽出精度の向上を実現しました(図3)。
区画線のアシスト図化では、白線部分とアスファルト面とで点群の反射強度の乖離が大きい傾向を利用しました。また、白線のかすれや、白線の分岐などへの対策を行っているため、作業者が白線部を1地点指定するだけで安定して区画線を抽出できます(図4)。
その他の地物に対しても車道部や区画線と類似した方法を開発しました。



道路地図データの検査・編集
アシスト図化や手動の図化によって作成した道路地図データの異常箇所を効率良く検査するために、「自動検査機能」および「三次元座標の手動編集機能」を開発しました。また、編集作業支援のため、「自動高さ推定機能」を開発しました。本機能によって二次元の道路地図データを扱う感覚で三次元データを編集できます。さらに、道路地図データの高度な編集と構造化を目的として、「2つの線分の接合機能」、「線分のスムージング機能」、「間引き機能」、「外周線発生機能」などを開発しました。上記「検査および編集機能」と前述した「アシスト図化機能」は、自社開発の三次元点群図化ソフトウェア「LaserMapViewerPro」に搭載しました(図5)。

AIによる画像情報からの道路地物抽出
道路標識や交通信号機などの道路地物は、まずAIによって画像上の位置と種別を判定します。道路標識は、案内標識、規制・指示標識、警戒標識に、交通信号機は、車両用と歩行者用に分類可能としました。次に、点群を利用して、抽出された地物の画像上の位置から実空間における三次元位置を推定します。開発した手法により、複数の標識や交通信号機などが集中している場合でも、各地物を適切に抽出できることを確認しました(図6)。
道路地物は高い抽出率によって抽出できるものの、誤抽出や抽出漏れも存在します。そこで、処理結果を効率良く確認し、修正するための専用ツールも開発しました。

おわりに
点群と画像を併用した処理アルゴリズムの開発により、高精度三次元道路地図データ生成の効率化を実現しました。本技術を利用することで、広域のMMSデータに対しても効率良く、高精度に道路地図データを生成できます。今後は、点群のアシスト図化手法を発展させて、自動抽出技術の実現を目指します。また、抽出率のさらなる向上や、今回対象外とした道路地物を点群解析やAIによって自動抽出する手法の開発も進めていきます。