先端研の研究領域
研究事例
航空レーザ点群によるLOD2建物モデリング自動生成技術
三次元都市モデル構築の効率化を目指して
はじめに
内閣府のi-都市再生や国交省の都市DX、インフラ分野DXなど、国は都市・インフラ・建築物の三次元データの整備および利活用を推進しています。昨今では航空レーザ測量や車載型レーザ計測システム(MMS)などによって、高密度・高精度な点群が取得され、様々な分野において点群の活用が期待されています。このような中、国交省の三次元都市モデルの整備と活用を目指す「まちづくりのDX(project “PLATEAU”)」の取り組みで、屋根形状を復元したLOD2※1レベルの建物モデルの整備が進められています。現状では詳細なLOD2モデルの整備はオペレータの手作業が主流であり、汎用性の高い自動モデリング機能に需要があります。本稿では、航空レーザ点群によるLOD2建物モデリング自動生成技術を開発しましたので紹介します。
開発概要
本技術は、航空レーザなどで取得した点群および二次元の建物外周線データを入力とし、点群から屋根面を推定し、モデルの構成要素生成および統合、整形を行うものです(図1)。屋根面推定の工程では、まず点群の分布特徴より、屋根面を面ごとに分類します。次に格子メッシュを生成し、点群の屋根面分類情報をメッシュに付与します。格子メッシュの屋根面分類情報の補正・統合を行った後、屋根境界線を取得します。モデル構成要素生成・統合・整形の工程では、屋根面、壁面、底面の幾何学的な情報を取得し、これらを統合し三次元モデルを構築します。さらに生成された三次元モデル面と入力点群との距離を指標化し、モデルの品質評価を行います。

技術的特徴
空中写真や点群から建物モデルを自動生成する従来の方法は、屋根面数が少ない基本的な家屋形状に限定したり、予め定めた屋根形状パターンに当てはめる方法などであり、屋根面数が多い建物や、段違い屋根など落差境界を持つ建物の形状を正確に再現することができませんでした。
開発手法では、点群の屋根面分類を行い、各点に屋根番号を付与します(図2a)。建物外周線を包括するように格子メッシュを生成し、メッシュ内の点群のうち代表的な屋根面番号を格子メッシュの屋根面番号とします(図2b)。このように、屋根面分類された点群をメッシュ化することで、判別困難な点群を除外する効果があります。さらに、メッシュに付与された屋根面番号を、周辺メッシュを参照しながら補正することで(図2c)、再現不要な軒や庇などの小さな面を除外しつつ、主要屋根形状のモデル化を実現しています。
自動生成された建物モデルは、日本の一般的な家屋形状だけでなく、落差境界を持つ建物(図3b, d, e)やビルの屋上設備(図3f)を再現することができます。また点群の分布特徴のみから屋根形状を推定するため、点群生成方法に制限がありません。航空レーザ点群のほか、航空写真から生成されたDSM点群やSfM/MVS処理で生成された点群なども入力データとして適用可能です。

a)屋根面ごとに分類した点群 b)作成した格子メッシュ c)補正した格子メッシュ

建物a~cは一般家屋、建物d~eは大型建物。左から電子国土基本図(オルソ画像)、色付き点群、自動生成モデル
おわりに
今回開発した技術は様々な種類の建物をLOD2モデル化する手法であり、一般家屋から大型建物まで対応したものです。
このため、LOD2建物モデルデータ作成業務における作業コストの低減を期待できます。
今後はさらなる改良に取り組み、三次元都市モデルの効率的な整備を目指し、まちづくりのDXを推進していきます。なお本内容は出願中の特許技術の一部となります(特願2022-106102号)。
※1 建物の屋根形状を再現したモデル。LODはLevel of Detailの略でモデルの詳細レベルを示す。