アジア航測株式会社 先端技術研究所 アジア航測株式会社 先端技術研究所

先端研の研究領域

研究事例

AIによる空中写真内の障害箇所検出

空中写真検査作業の効率化に向けて

はじめに

空中写真撮影には、天候や撮影条件による画像内の障害箇所(図1に示すハレーション、雲、煙など白い隠蔽物等)を検査する作業工程があります。この工程では、検査者の熟練度による結果のばらつきや、目視作業による作業時間の増加とコストの上昇が課題となっています。
本稿では、AIによる物体検出技術を用いた空中写真内の障害箇所検出技術を開発しましたので紹介します。

図1 空中写真の障害例
図1 空中写真の障害例

開発概要

物体検出は、画像や映像内に存在する特定の物体を検出し、その種類を判定する技術です。近年のAIや画像処理技術の発展により精度が向上し、衛星画像や空中写真からの地物の自動抽出など、活用の幅が広がっています。
今回開発した技術は、入力した空中写真からAIモデルによって画像内の障害箇所を自動的に検出します。検出結果は、元の画像と障害種別で色分けされた矩形枠を重畳させた画像ファイル、および矩形枠の座標・障害種別・尤度を記述したcsvファイルとして出力されます(図2)。
高精度な検出モデルを構築するため、複数のアルゴリズムを試行して比較し、最も検出漏れが少ない傾向を示したYoloX※1というAIアルゴリズムを採用しました。また、地物の形状やテクスチャが類似しているクラスを統合するなどして精度を高める工夫を取り入れています。

図2 処理フロー
図2 処理フロー

AIによる障害箇所検出結果

図3にAIによる障害箇所検出結果を示します。AI検出結果における括弧内の数字は推論対象の予測確率を表します。建物のハレーション、水部のハレーション、雲・煙に類する障害、ゴーストおよび雪といった主要な対象に対して、人による検出結果と同等の結果が得られていることがわかります。
効率化の効果を確認するために、従来の目視検出とAI検出の作業時間を比較しました。AIによる処理時間と検出結果の修正時間を合算したところ、人による作業時間の半分以下であることを確認しました。検査と矩形枠の描画による大量の人手を要した目視検査手法と比べて、本技術は検出結果の確認や修正作業が発生するものの、作業効率の大幅な向上を期待できることが示されました。
また、従来手法は検査者の熟練度により結果に差異が出ますが、今回の提案手法では同一のAIモデルで検出を行うため、均一的な結果を得ることが可能です。

図3 人による検出結果(正解)とAI検出結果の比較
図3 人による検出結果(正解)とAI検出結果の比較

おわりに

本開発では、空中写真内の障害箇所検査作業を想定してAIによる物体検出技術を活用して検出の自動化を試み、大幅な作業時間の短縮を見込むことができる結果を得ました。従来の目視検査手法の課題であった結果のばらつきの改善やコストの低減が期待できます。現在、実際の障害箇所検出作業に利用可能なツール開発を進めています。
アジア航測では、AI技術の活用により、各種データ生産工程のさらなる作業効率化と品質向上に取り組んでいきます。

[参照]
※1 Ge, Z., Liu, S., Wang, F., Li, Z., & Sun, J. (2021). YOLOX: Exceeding YOLO Series in 2021. *arXiv preprint arXiv:2107.08430*.