アジア航測株式会社 先端技術研究所 アジア航測株式会社 先端技術研究所

研究室紹介

3Dイノベーション研究室

社会インフラの維持管理や自動運転、ロボット開発など、様々な分野で3Dデータが欠かせなくなりつつあります。そこで、3Dイノベーション研究室は、安心・安全な社会を実現するために、LiDAR等によって取得した点群の処理、SfM/MVS(Structure from Motion / Multi View Stereo)等の画像からの3次元再構成技術の活用、AR技術による3次元空間情報の可視化と活用に関する技術開発と社会実装に取り組んでいます。主に、現場調査の安全性向上や効率化に関する取り組みと、3Dデータの自動処理技術や高精度化技術の開発、3Dデータの可視化に関する取り組みを行っています。以下に代表的な取り組み内容を紹介します。

人が立ち入りにくい橋梁や砂防堰堤、ダムなどのインフラ構造物の点検する際は危険を伴います。また、老朽化する高い専門能力を持っている技術者は減少しており、作業の効率化が社会的な課題となっています。これらの課題の解決に向けて、当研究室では、主にドローン(UAV)を使用して撮影した画像を使った点検手法の実用化を目指しています。撮影した画像から点群と部材ごとのオルソ画像を作成し、損傷の判読や点検調書の作成などを実施します。点検結果は3次元の位置情報を持っているため、3Dビューア等で損傷の位置を直感的に把握可能です。将来的には点検結果のデータを蓄積することで、損傷の進行程度を把握でき、予防保全型の維持管理に役立てることができると考えています。

現場作業のDX(デジタルトランスフォーメーション)化と、当社の得意とする航空レーザ測量やMMS(Mobile Mapping System)などによって取得した3Dデータの利活用を目的として、AR(Augmented Reality、拡張現実)技術に関する技術開発に取り組んでいます。GISやCAD、3Dモデルなどの地理空間情報をスマートフォンやタブレットでAR表示するアプリケーションを開発しており、GNSS(GPS)の測位精度に起因する位置の誤差を補正するために、QRコードやGISデータ、点群データなどを用いた位置補正技術を開発しています。技術開発すると共に、AR技術による現場調査の効率化や、災害シミュレーション結果の可視化、防災教育などへの活用検討も進めています。

航空レーザやMMSによって取得した点群の自動位置合わせ技術開発を開発しています。GNSS/IMUの誤差に起因する点群データセット間の位置ずれを補正したり、地理座標のない(相対座標の)点群に地理座標を付与するための技術を開発しています。また、MMS取得点群の活用技術として、車道と歩道の境界線や区画線の抽出技術の開発や、路面のわだち掘れやひび割れなどの損傷抽出技術も開発しています。このような開発を効率良く行うためには、様々なデータセットが必要になるため、ゲームエンジンを活用して、3D空間内においてMMSによる点群取得をシミュレートし、疑似的な点群を生成する取り組みも行っています。この技術はかすれのある区画線の自動抽出手法開発などに活用しています。また、ゲームエンジンは、データ取得に多大なコストがかかる場所やアクセスが困難な場所などにおけるデータ作成にも活用しています。ゲームエンジンでは、様々な損傷パターンの構造物(大きく破損した構造物等)や、様々な日照条件や天候などを再現し、擬似的に計測・撮影したデータを作成できます。作成したデータをAIによるインフラの点検精度向上などに役立てる取り組みを進めています。

近年、LiDARは低価格化や高性能化が進み、多くの場面で利用されるようになりました。掃除用や配膳用のロボット等にもLiDARはよく搭載されており、空間の認識等に活用されています。人や車のいる空間において点群を取得する場合、遮蔽物があると、その裏側の点群は取得できず、空間認識等に影響を及ぼす可能性があります。そこで、欠損部のある点群を補間する処理や人などの移動体を自動で識別する技術の開発にも取り組んでいます。

研究内容・キーワード
XR(AR/MR/VR)、点群処理、インフラ施設点検、写真測量
■点群処理(道路地物の半自動図化事例)
■3次元再構成技術によって作成した橋梁の点群データ
■ARアプリケーション
■MMS取得点群の自動位置合わせ
■インフラ点検に使用するドローン(UAV)
■MMS取得点群からの車道境界線自動抽出
■MMS取得点群からの路面損傷箇所の自動抽出

先端技術研究所 3Dイノベーション研究室 室長

本間 亮平(ほんま りょうへい)

PROFILE

所属学会
日本写真測量学会
プロフィール
2006年アジア航測(株)入社。2023年北海道大学大学院情報科学院博士後期課程修了。博士(情報科学)、技術士(総合技術監理部門、応用理学部門)、測量士、空間情報総括監理技術者。平成24年度日本写真測量学会秋季学術講演会論文賞、平成28年測量・地理空間情報技術奨励賞、令和4年度日本写真測量学会学会奨励賞受賞。写真測量、MMS、XR(AR/MR/VR)に関する技術開発に従事。趣味はLEGO。

研究事例

論文

※社外共著者は()で表記しています。